(1)そもそも「控除」ってなんですか?
無事に認定NPO法人になって、ご寄付をいただいたのですが
寄付者の方から
「これで最低4割は返ってくるんだよね!
いつ返ってくるの?
振込先とか教えといたほうがいいの?」
と聞かれましたが‥
この「税金が返ってくる」っていう説明は間違ってない‥ですよね?
税金のメリットの説明の際には
ふたつのポイントに気をつけてください!
(1)
「所得税からの約4割の税額控除」は
【寄付額の約4割が現金で返ってくる】という意味ではなく
【寄付額の約4割ぶん、課税される所得税額が安くなる】
制度です。
(2)
現金が返ってくるのは、「源泉徴収で所得税を払っているサラリーマン」の方が、払い過ぎの状態(=既に支払った税額>確定申告後の正しい税額)が発生したときだけです。
【控除】とは 「ある金額から一定の金額を差し引く」ことです。
認定NPO法人への寄付金(他にも指定の公益法人等も)は、
政府が定める「特定寄付金として特別な控除の対象となっています。
つまり
“寄付した金額に応じて、課せられる税額から一定金額を差し引く”
ことができるのです。
以下では、主に「所得税からの控除」について解説してゆきます。
※住民税の控除は各自治体の条例により実施状況が異なります。
各地の条例制定の状況などは、認定とろう!NETでも追ってリリースしてゆきます。
私たち、実はたくさん「控除」されている |
■ ちょっと難しい話 : 所得税の算出方法
私たちに課せられる所得税の額は
( 収入金額 - 所得控除額 ) × 所得税率 - 税額控除額
によって算出されます。
(1)収入金額 から
▼
(2)所得控除額 を引いたものに
▼
(3)所得税率 をかけて算出した金額から
▼
(4)税額控除額 を引いた額が、最終的な「所得税の課税額」です。
(1)収入金額から、まずは(2)所得控除を引き算するのですが、
この (2)所得控除 には、以下のようなたくさんの内訳があります。
給与所得控除 |
「給与」で収入を得る場合、額に応じて一定金額が控除されます。 サラリーマンの概算経費です。 |
基礎控除 |
すべての納税者が無条件で38万円が控除されます。 |
社会保険料控除 | 「雇用保険料」「厚生年金保険料」「健康保険料」「年金加算掛金」として支払っているものは「社会保険料」として、その全額が控除されます。 |
扶養控除 | 「扶養家族」にあたる者の人数、主に子どもの人数に応じて控除されます。 |
配偶者特別控除 | 配偶者がいるとき、最高38万円(配偶者の所得に応じて)まで控除されます。 |
配偶者控除 | 配偶者が特定の条件を満たしているとき、上記の「配偶者特別控除」とは別に一定額が控除されます。 |
生命保険料控除 | 生命保険に加入しているとき、加入額に応じて最高5万円控除されます。(さらに個人年金保険でも最高5万円控除されます。) |
地震保険料控除 | 地震保険に加入しているとき、加入額に応じて最高5万円控除されます。 |
医療費控除 | 健康保険が適用される医療行為の自己負担額が年間10万円を超えた金額だけが控除されます。 |
! 寄付金控除 |
国が定める「特定寄附金」にあたる支出をした際に、一定の金額が控除されます。 |
ここで ↑ すでに「寄付金控除」という言葉が出てきていますが、
もう少しだけ、落ち着いて税金のお話。
こうして所得控除を引いたものが、「課税される所得金額」です。
ここに、
(3)所得税率 をかけ、
(4)税額控除 を引いた金額が、 実際に課税される所得税額です。
ちなみに所得税率は、収入が多いほど高い税率が課せられています。
参考: 所得税の税率/国税庁ホームページ
(4)税額控除 にも、実はこれだけの種類があります。
(一律の税額控除) |
一律で全ての納税者に適用される控除額です。 所得税率によってその額が異なります。 参考 |
マイホームの取得等と所得税の税額控除 | 住宅ローンを利用して住宅を購入した時、一定の要件を満たしていれば受けることが出来ます。 |
外国税額控除 | 外国で収入があったとき、二重の課税とならないように調整される金額です。 |
配当所得があるとき(配当控除) | 日本国内に本店のある法人から受ける、剰余金や利益の配当・分配、 投資信託の収益分配等があれば一定額が控除されます |
政党等寄附金特別控除制度 | 政党又、政治資金団体に対する寄附をしたとき、一定額が控除されます。「所得控除」と「税額控除」どちらかを選択できます。 |
認定NPO法人に 寄附をしたとき |
認定NPO法人の特定非営利活動に寄附をしたとき、一定額が控除されます。「所得控除」と「税額控除」どちらかを選択できます。 |
公益社団法人等に寄附をしたとき |
特定の公益財団法人等に寄附をしたとき、一定額が控除されます。「所得控除」と「税額控除」どちらかを選択できます。 |
例えば、年収500万円、家族4人のサラリーマンの場合‥ |
「年収500万円」「世帯主、共働きの配偶者、子ども2人の4人家族」の所得税の計算は、
おおむね以下のようになります。
※各種控除額は一例としての概算です。実際の控除額は世帯それぞれの条件で増減します。
(1)年収500万円
▼
(2)所得控除額 を引く (←寄付することで、この所得控除 額、もしくは)
(給与所得控除+基礎控除+扶養控除)
268万円
(1) - (2) = 「課税対象となる所得」は 232万円
▼
(3)所得税率 をかける
「課税対象となる所得」 232万円のときの所得税率と計算式は
→ 【課税対象となる所得×10%-97500円】 なので、 参考
232万円☓10%=23万2000円 -97500円
= 139,700円
▼
(4)税額控除 を引く (←この税額控除、どちらに適用するか選択できる)
※住宅ローンを組んだ、税額控除の対象となる団体への寄付等があればここで
幾らかを差し引くことができます。 例では適用なしとします
139,700円 - 0円
= 139,700円 が、年間の所得税課税額になります。
このように、所得税の算出はたくさんの「控除」項目があり、
うまく活用することで課税額をおさえることができます。
医療費が高くなった年度や、マイホームを購入した時などの事は
ぜひとも知っておき、活用したいですね。
そう、 ● 認定NPO法人に寄付をしたとき も、課税額をうまく抑えることが
できるようになるのです。
控除される=「支払うべき税金が安くなる」事ですので 必ず「現金が手元にもどってくる」わけではありません |
「年末調整で税金がもどってくる」という表現が、サラリーマンの間ではよく使われます。
給与所得者の場合、所得税が月々の給料から天引きされるのですが、
ここで毎月支払っている所得税の額は、あくまで「概算」になってしまいます。
なぜなら、一年が終わってみないと「その年の控除額」がはっきりしないため、
最後に各種控除を当てはめて再計算、調整するしかないのです。
これを「年末調整」といいます。この際に
【実際に算出された所得税額よりも、多く天引きされてしまっていた】額について、
納税者に還付されるのです。
つまり、
【控除を適用しても、払い過ぎていない】 場合や、
【そもそも自営業者なので所得税を天引きされていない】 方などの場合は
どれだけ控除されても、 “手元に現金がかえってくる” ということはありません。
払うべき税金がそのぶん安くなるのです。ここは注意しましょう。
次のページでは、実際に認定NPO法人に寄付をした時、
「何がいくら控除されるか」を具体的に見てみましょう。
2011年の税制改正で、たいへん大きな優遇が実現しています。
まさに「知って得する!」寄付税制のお話です。