(2) 寄付金控除のしくみとルール ~こんな人ならこれだけお得
「新寄付税制」でNPOが寄付を集めやすくなった!と
パンフレットやセミナーなどで聞きました。
これを寄付者の方にご説明さしあげたいのですが、
実際のところ、どのくらいの税制優遇があるのでしょう。
個人の寄付者の方に説明する際には
(1)
2011年、税制改正で実現した 「税額控除」は、
とても大きなメリットであること!
(2)
「寄付金控除」をうけるためには、寄付者の方の手で
【確定申告】を行わなければならないこと。
に気をつけてください。
(ポイント1) 税額控除でこんなに変わる! |
2011年6月に施行された新寄付税制最大のポイントは、
これまで【所得控除】として扱われていた「認定NPO法人への寄付による控除」が
【税額控除】 【所得控除】 どちらに適用するかを
寄付者(=納税者)が選択できるようになった
事です。
つまり、前ページのチャートでいいますと
(1)収入金額 から
▼
(2)所得控除額を引いて ←ここで計算するか(以前はここだけ)
▼
(3)所得税率 をかけて算出した金額から
▼
(4)税額控除額を引いた額 ←ここで計算するかを選ぶのです。
=最終的な「所得税額」 ※オススメ!!
それでは、先ページと同じ例で考えてみましょう。
「年収500万円で共働き、小学生の子ども2人の世帯」が、
認定NPO法人に5万円の寄付をしたとき、
どちらを選べばどのようになるのでしょうか。
【所得控除】を選んだ場合 |
まずは「所得控除」による計算方法で考えてみます。
控除額の算出方法は、
年間の寄付金額 ‐ 2,000円 = 寄附金控除額
※算出時の 年間の寄付金額 は「同年の総所得金額等の40%」を限度額とする。
ですので、
50,000円 ‐ 2,000円 = 【 48,000円 】
が、 【所得控除】に算入されます。
すると‥
※寄付金控除以外の各種控除額は、あくまで一例としての概算です。
(1)年収500万円
▼
(2)所得控除額を引く ← ここで控除額を参入します
(給与所得控除+基礎控除+扶養控除)
268万円 + 48,000円 =272.8万円に
(1) - (2) = 「課税対象となる所得」は227.2万円
▼
(3)所得税率 をかけて
「課税対象となる所得」227.2万円のときの所得税率と計算式は
→ 【課税対象となる所得×10%-97500円】 なので、 参考
232万円☓10%=23万2000円 -97500円
=129,700円
▼
(4)税額控除 を引く
※住宅ローンを組んだ、税額控除の対象となる団体への寄付、
等があればここで幾らかを差し引くことができます。
129,700円 - 0
= 129,700円 が実際の所得税額
(控除額を参入したあとで税率を掛けているので、実際の減税効果は
控除額×所得税率 となってしまう。この場合は10%)
旧来の制度では、頑張って「5万円」を寄付しても、実際の減税額は
その一割にも届かないのが現実でした。
では、2011年から適用がはじまった「税額控除」は、
どのように違うのかを見てみましょう。
オススメ新制度!【税額控除】の効果 |
「税額控除」の場合の算出方法は
(年間の寄付金額-2,000円) × 40% =税額控除額
※算出時の 年間の寄付金額 は「同年の総所得金額等の40%」を限度額とする。
※税額控除額 は「その年の所得税額の25%」を限度額とする。
※「公益社団法人等寄附金特別控除」にあたる控除がある場合、
認定NPO法人への税額控除額と合算して限度額が適用される。 参考
ですので、
(50,000‐2,000円) ☓40% = 【 19,200円 】
が控除額です。
「 ちょっと! さっきよりも控除額が低いじゃないか! 」
とお思いかもしれませんが、
計算式に【算入する場所】が違います。
【税額控除】に算入されることで、こちらのほうが断然おトクになるのです。
先ほどの例と同じように、
「年収500万円で共働き、小学生の子ども2人の世帯」で考えてみます。
※寄付金控除以外の各種控除額は、あくまで一例としての概算です。
(1)年収500万円
▼
(2)所得控除額を引く
(給与所得控除+基礎控除+扶養控除)
268万円
(1) - (2) = 「課税対象となる所得」は約232万円
▼
(3)所得税率 をかける
「課税対象となる所得」232万円のときの所得税率と計算式は
→ 【課税対象となる所得×10%-97500円】 なので、 参考
232万円☓10%=23万2000円 -97500円 =134,500円
▼
(4)税額控除 を引く ←ここで算入します!!
19,200円 を控除
134,500円 - 19,200円
= 115,300円 が実際の所得税額
※事実上の減税額=19,200円←控除額まるごと!
そう、税額控除は 【税率を掛けたあとで】 控除額を算入するために
控除額はそのまま減税額となります。
寄付した5万円の約40%、19200円がお財布に残るのです。
モデルのような世帯の場合は、
だんぜん、この新制度【税額控除】を使ったほうがおトク 、です!
どうして“どちらかを選べる”という仕組みなの? |
この世帯が、年間に「1万円」、「5万円」、「10万円」寄付したときの
【所得控除】【税額控除】の効果を表にしてみました。
■年収500万円の世帯 における、実際の減税額
1万円の寄付 | 5万円の寄付 | 10万円の寄付 | |
所得控除 (寄付金額-2,000円)×10% |
800円 | 4,800円 | 9,800円 |
税額控除 (寄付金額-2,000円)×40% |
3,200円 | 19,200円 | 39,200円 |
「なんだ、どう考えても 【税額控除】のほうがお得なんだね。」
「どちらかを選べる、なんて必要ないのではないか。」
とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は
“高額所得者が、ある程度の額以上を寄付したとき”
に【所得控除】を選んだほうが減税額が大きくなる場合があるのです。
高額の寄付をしたら、他の人より優遇が弱くなった!などという事態がおきないよう、
どちらかを選べる、というシステムがとられています。
住民税からの控除10% は自治体の条例しだい |
厳密に言えば、認定NPO法人に対する寄付での控除には、【所得税】からの控除と【住民税】の控除の、ふたつがあります。
【所得税】からの控除は、日本全国、全ての人が
寄付金額(-2千円)の寄付金額の40% の控除を受けることができます。
そしてお住まいの自治体によっては、
【住民税】からも寄付金額の最大10% の控除を受けることができます。
(最大で 都道府県民税4% / 市町村住民税6%)
これは「各自治体の条例によって定められなければ」適用されないため、
お住まいの地域によってその控除の有無、控除額が異なってきます。
皆さまがお住まいの地域は条例どうなっているか?を確認しましょう。
参考:各自治体「寄付金に関する地方税条例(3号条例)」制定状況
(ポイント2) 「確定申告」することで、寄付金の控除が受けられる |
「確定申告」は、自営業者の方にとっては毎年の事務手続かもしれませんが、
サラリーマンはじめ給与所得者の皆さまには、やはり未経験の方も多いでしょうし
やり方が分からない、難しそう、などとお悩みになるかもしれません。
しかし給与所得者にとっても、高額な医療費を自己負担した場合や
住宅ローンを組んだ初年度など、
「確定申告をすることで税金を安くすることができる」
機会がたくさんあります。
もちろん 認定NPO法人への寄付をした場合 もそうです!
せっかくの優遇税制を賢く活用するためにも、
事項では一緒に 「確定申告」 について知っていきましょう!